日時 2002年 2月 4日(火) 15時〜16時40分 場所 経済学部新棟3階第3教室 講演者 青木 敏(数理情報) 演題 マルコフ連鎖・モンテカルロ法による分割表解析 概要 マルコフ連鎖・モンテカルロ法を用いて、分割表に対する各種の条件付 検定を行なうために、局外母数に関する十分統計量(一般には周辺度数)が等 しいすべての分割表が推移可能となるような、マルコフ連鎖の構成方法につい て考える。この問題に対する breakthrough は、Diaconis andSturmfels (1998) による研究である。彼らは、連結な連鎖を構成するための基底(マル コフ基底)が、周辺度数の制約から決定される多項式環イデアルの生成元に対 応することを示し、代数アルゴリズムを用いてマルコフ基底を求める手法を提 案した。しかしこの手法が、様々な問題、特に、高次元の分割表や水準数の多 い分割表に対しても有効かどうかは明らかでなく、計算時間も問題となる。 本発表では、いくつかの例に対して、代数アルゴリズムを用いずにマルコフ基 底を求めた結果を報告する。本発表で紹介する手法は、極小なマルコフ基底を 導出するものであり、紹介する多くの場合においては、一意な極小マルコフ基 底が存在するという結果が得られた。発表では、極小基底の性質と、一意極小 基底が存在するための条件についても言及する。さらに、より高次元の分割表 で、周辺度数の制約から誘導される独立グラフがよい性質をもつ場合のマルコ フ基底の構成について、関連する研究を紹介し、基底の極小性について考察す る。なお、本研究は、竹村彰通教授との共同研究である。