統計学輪講(第37回)

日時    2005年 12月 20日(火)  15時〜16時40分
場所    経済学部新棟3階第3教室
講演者  大津 起夫(大学入試センター)
演題    非線形因子分析によるテスト得点の比較
概要:
因子分析はテストデータの分析に広くに利用されている手法であるが,通常は
変数間の線形の関係のみを分析の対象としている.しかしながらテスト難度の
比較を大量のデータに基づいて行う場合,線形の関係だけでは十分に詳細な特
徴を捉えることができない.変数間の非線形の関係を分析するために,潜在変
数(因子)のスプライン関数による変換によって観測変数の条件付期待値を表
すモデルと,その推定プログラムとを開発した.このモデルを用いることによ
りテスト特性の詳細な検討を行える.因子分析のこのような拡張には,モデル
同定の難しさがつきまとうが,緩やかな制約を独自因子の分散に課すことによ
り,推定が不安定になることを回避する.観測変数が2値である場合には,2 
項分布の母数のロジットを潜在変数の関数として表現する.これによりテスト
データの分析に広く用いられている2 パラメータの項目応用理論(IRT)モデル
を特殊ケースとして含み,また連続変数と2値変数の混在したデータを扱える.
さらに,潜在変数を離散近似することにより数値的な取り扱いが容易になり,
MAR(Missing At Random) の仮定のもとで欠測値に容易に対応できる.人工デー
タへの適用例,および大規模な入学試験データにおける科目間の難度比較の分
析例とを紹介する.



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