日時 2006年 1月 10日(火) 15時〜16時40分 場所 経済学部新棟3階第3教室 講演者 岸野 洋久(農学生命科学) 演題 配列と構造の適応進化 概要: 遺伝子配列の種内多型を調べ、あるいは種間で比較することにより、進化速度や進化 プロセスを推定することができる。集団の大きさや世代の長さ、機能的な制約の強さ などが変化すると、分子進化速度が変化するため、逆に分子進化速度の系統間、遺伝 子間の違いから適応進化を検出することができる。ところで、分子レベルの適応進化 の背景には、タンパク質の微細構造の変化やその生産量の変化がある。たとえば宿主 内におけるウイルスの適応進化には、主として前者が関係していると思われる。X線構 造解析やNMRによりタンパク質の立体構造を精度よく調べることができるが、立体構造 が宿主内で変化していく様子を測定するのは実際上不可能である。HIVの外被タンパク にあるV3ループ、特にその中心部を占める15アミノ酸は、免疫系の認識部位であり、 変異が大きく多様化圧が働いていることが知られている。そこで、患者から定期的に 集められた配列データと5つの構造データをもとに、配列・構造適応度と構造柔軟性を 構造データベースに基く経験尤度とエントロピーで記述し、その変化を調査した。今 回の報告は、渡部輝明氏(高知大学)との共同研究に基づく。
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