統計学輪講(第3回)

日時    2006年 5月 9日(火)    15時〜15時50分
場所    経済学部新棟3階第2教室
    [※ 今年度夏学期は教室が変更になっております]
講演者  上村 鋼平(医D1)
演題    中間評価で観察された群間差に基づく症例数再設計方法の検討

概要:  
  臨床試験の途中にデザインパラメータ(群間差または分散)の大きさを再確
認して症例数を再設計するデザインは,症例数不足による試験失敗を防ぐ点で
魅力的であるが,試験途中の結果に基づいて症例数の変更を行うと,エラーが
上昇することが問題となる.しかし,近年,それを克服する方法が提案された. 
最終解析時の検定統計量を調整するCuiらの方法と,中間評価時の条件付検出
力が50%以上ならば症例数の再設計を実施するという50%-CPデザインである。
本研究では,50%-CP デザインの検出力を改善するために,再設計を行う境界
値を20%に下げるという新たな方法を提案した.提案した方法は,最大症例数
に対し実施可能性をほとんど妨げない程度の緩い制約を設けることで, エラー 
を名義水準以下に保つことができる.さらに,シミュレーション実験を通して,
Cuiらの方法,50%-CP デザイン,提案する方法の3つを,実践的な観点から比
較・検討した.その結果,50%-CPデザインではほとんど検出力が上昇しなかっ
たのに対し,提案した方法では,10%程度検出力が上昇した.また,提案した
方法は, Cuiらの方法と比較すると,症例数を増加させた場合の実質の検出力
の上昇効率が高く,同じ期待症例数と検出力であっても,症例数が最大まで達
する確率が低く,かつ最大に達した場合にはほぼ確実に統計的な有意差が観察
される (条件付 エラーが極めて低い)という優れた性能を持ち,さらに,群
間差が存在しなかった場合に誤って症例数を増加させてしまうという危険性を
最小限に抑えられるという保守的な性質も同時に持ち合わせることが示された.


統計学輪講のスケジュールに戻る.


Tokyo University