統計学輪講(第21回)

日時      2008年10月7日(火)    15時〜16時40分
場所      経済学部新棟3階第3教室
講演者    倉田 博史 (情報学環/総合文化研究科)
演題      ユークリッド距離行列の性質、特に順序構造とブロック構造について

概要

Euclid 距離行列の概念は、統計科学における多次元尺度構成法を始め様々な
領域に広く応用されている。その定義は次の通りである。すなわち、Euclid空間
にn個の点が与えられたとき、それらの相互距離をn×n非負対称行列の形に書ける
のは明らかである。この逆が成り立つとき、すなわち、所与のn×n非負対称行列
に対して、それを相互距離として持つn個の点の配置が適当な次元のEuclid空間
に存在するとき、その行列をEuclid 距離行列(Euclidean distance matrix)と言
う。
 本報告では、Euclid距離行列の持つ性質のうち、順序構造とブロック構造とに
焦点を当てて解説する。
(1)順序構造:Euclid 距離行列の空間に置換行列群によって誘導される順
序を定義し、その構造を調べる。具体的には、Euclid 距離行列がこの順序の意
味で大となると、Euclid 距離行列の固有値の散らばりが(マジョライゼーション
の意味で)大となる、などの不等式を導く。
(2)ブロック構造:Euclid距離行列がブロック構造を持つとは、対応するn
個の点配置が幾つかの球面に乗っていることである。このような行列の特徴付け
について議論する。

(1)は山形大学の佐久間雅准教授との共同研究(Kurata and Sakuma (2007,
Linear Algebra and its Applications)として既刊)とKurata (2008)。(2)はテ
キサスA&M大学数学統計学科のPablo Tarazaga 教授との共同研究(Kurata and
Tarazaga (2008))にもとづく。