統計学輪講(第37回)

日時      2011年01月18日(火)    15時00分~16時40分
場所      経済学部新棟3階第3教室
講演者    岸野 洋久 (農)
演題      遺伝統計における時空間モデル

概要
今回は、遺伝統計における時空間モデルの話題を3つ提供させていただきます。
 一つ目は分子進化からの話題で、タンパク質における多様化圧のかかる部位を
塩基配列の比較から推定するものである。これにより、適応戦略とコスト、予測
への道が開かれる。配列の尤度はコドンの置換を表現するマルコフ過程でモデリ
ングされる。マルコフ過程の推移速度は多様化圧パラメータを含む。タンパク質
は折りたたみ構造を持つことから、このパラメータに空間的な平滑化事前分布を
導入する。2つ目は集団遺伝学からの話題で、世界各地からのマラリアのサンプ
ルの遺伝的多様度のデータから、マラリアの伝播の履歴を推定する。これにより、
宿主であるヒトの移住に伴い、マラリアが伝搬していった様子を読み取ることが
できる。地域間交流の頻度の情報は、薬剤耐性の拡散の確率予測へ結び付く。
ある地域に少数の個体が移住してくると、その時点では遺伝的多様度は低いが、
時が経つにつれ集団中の突然変異が蓄積され、多様度が上がっていく。従って、
ある地域を基点に、ここから遠くなるにつれ遺伝的多様度が下がる現象を、移住
と拡散・伝播の飛び石モデルで説明する。最後に遺伝疫学からの話題である。分子
マーカーの多型と表現型の多型を関連付ける遺伝子集合を抽出する。遺伝子集合の
代謝産物を調べることにより、治療への道が開かれる。性質が調べられている遺伝子
集合のリストは年々膨らんでいるが、完全ではない。そこで既知の遺伝子集合に
限定することなく、遺伝子ネットワークのデータベースから関連のある部分ネット
ワークを選び出す。ここでは自閉症について、遺伝子ゲノム領域のコピー数多型の
うち頻度の低いものに注目し、分析する。これらは、渡部輝明先生(高知大学)、
田邉和裄先生(大阪大学)、西山毅先生(名古屋市立大学)との共同研究である。