統計学輪講(第06回) 日時 2012年05月22日(火) 14時50分~15時40分 場所 経済学部新棟3階第3教室 講演者 小池 祐太 (数理D1) 演題 非同期従属サンプリングおよび内生的ノイズの下での累積共変動の推定に ついて 概要 近年金融取引の高速化等によって高頻度データを入手できる環境が増えてきた. ここ では, そのようなデータへの応用を目的として, 与えられた2つの連続セミマルチン ゲールの観測データからその累積共変動と呼ばれる量を推定する問題を考える. 2つの連続セミマルチンゲールが同時刻に直接観測されているとき, それらの時刻ご とのリターンの積の総和が, 観測頻度を増やすにつれて累積共変動に収束すること は, 理論的には古くから知られていた. しかし, 秒単位での超高頻度観測データに対 しては理論とは矛盾する現象が観察され, その原因が観測の非同期性(観測が同時刻 でない)とマイクロストラクチャーノイズ(直接観測ではない)であることが, 2000年 代に入って共通の認識となった. 近年非同期性とマイクロストラクチャーノイズのも たらす問題を同時に解消する推定量がいくつか提案されているが, それらの論文では モデルが応用上の観点からみて単純すぎるか, 推定量の収束レートが理論的に最適な 値を達成していない. 本発表では, 観測時刻およびマイクロストラクチャーノイズが セミマルチンゲールと従属関係をもつ場合を許すモデルを考え, その下で最適収束 レートを達成する累積共変動の一致推定量を構成する.