統計学輪講(第6回)

統計学輪講(第6回)
日時      2014年05月27日(火)    15時40分~16時30分
場所      経済学部新棟3階第3教室
講演者    柏原 康佑 (医)
演題:検証的臨床試験における症例数再設計法

概要
     医療において新しい治療法を提案するときには、患者を対象とした実験(臨床試験)により
データを収集しその治療法の安全性・有効性を確立することが求められる(Evidenced-Based Medicine; EBM)。
臨床試験は、一般的に目的に応じて複数実施される。最終的に試験治療の有効性の有無を判断する試験を、
特に検証的試験とよぶ。検証的試験は、患者を試験治療と対照治療(無治療あるいは既存の標準治療)に
ランダムに割り付け比較するランダム化比較試験が基本である。有効性の有無は、計画時にあらかじめ定めた
主要評価項目(プライマリエンドポイント)に対する仮説検定(有意水準片側2.5%)によりおこなう。
     検証的試験の計画における要素の1つに症例数設計がある。通常は、仮説検定の検出力が80-90%になるように
目標症例数を設定する。目標症例数は、原則として試験開始後に変更することはできない(αエラーの増大を防止するため)。
しかし、試験計画時に目標症例数を正確に設定することは現実には容易ではない。症例数設計に必要なパラメータを、
局外パラメータまで含め正確に指定することはほぼ不可能だからである。また、患者数が限られている疾患では、
定めた目標症例数を達成することも容易ではない。中には、途中で達成を断念せざるを得ない臨床試験もある。
     そこで、試験開始後に目標症例数を柔軟に変更できる「症例数再設計法」が提案され、活発に議論されている。
臨床試験では、目標とした症例数を同時に集めることは不可能であり、特に検証的試験では数年がかりで集積することが多い。
そのため、試験の途中で中間解析を行い、さらにその中間データに基づき症例数設計における局外パラメータを
推定するなどして目標症例数を変更することが可能である。「症例数再設計法」の方法論のポイントは、このような
目標症例数の変更を可能にしながら、αエラーを増大させることがない検定方式を構築することである。
     発表当日は、現在提案されている「症例数再設計法」の検定効率に対する問題を説明し、その対応として逐次検定に
基づく方法の提案について述べる。