統計学輪講(第15回)

統計学輪講(第15回)
日時      2014年10月21日(火)    14時50分~15時40分
場所      経済学部新棟3階第3教室
講演者    鈴木 皓博 (情報理工M2)
演題      高速自動微分法による余効すべり発生域の摩擦パラメータ推定 ~パラメータ分布の空間解像度の検証~

概要
余効すべりとは、地震が生じた周辺の領域で、地震後にゆっくりとした断層すべりが生じる現象である。大地震発生後、
余効すべりが周囲に伝播していくことにより、次の地震が誘発される可能性が示唆されている(例えば、Uchida et al., 2009)。
余効すべりがどのように時間発展するかを予測するために、プレート境界面の摩擦特性を理解することは極めて重要である。
例えばKano et al. (2013)では、2003年十勝沖地震の余効すべりを念頭に、初期値問題を解くための有効な手段である
高速自動微分法(伊理・久保田, 1991)を用いたデータ同化により、摩擦パラメータの推定に関する擬似観測データによる数値実験を行った。
データ同化とは、物理法則に従いつつ観測データに整合的なモデルを得る手法であり(淡路 他, 2009; 樋口 他, 2011)、
主に気象学や海洋学で発展してきたものの、最近は様々な分野へと応用範囲を広げている(Nagao, 2014)。
Kano et al. (2013)では、摩擦パラメータが拘束可能かどうかに焦点を当てており、余効すべり域の摩擦パラメータは空間的に
一様であるという仮定のもと、摩擦パラメータの推定が行われている。そのため推定された摩擦パラメータの空間解像度については
議論していない。摩擦パラメータの空間解像度が高い場所においてはモデルを精緻化できる可能性があると考えられるため、
摩擦パラメータの空間解像度を検証することは極めて重要である。そこで本研究では、2003年十勝沖地震を模した余効すべり
擬似観測データに対するチェッカーボードテストにより、摩擦パラメータの空間分布の解像度を検証した。


淡路敏之, 蒲池政文, 池田元美, 石川洋一, データ同化 -観測・実験とモデルを融合するイノベーション-, 京都大学学術出版会, 2009.
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樋口知之, 上野玄太, 中野慎也, 中村和幸, 吉田亮, データ同化入門 -次世代のシミュレーション技術-, 朝倉書店, 2011.
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Kano, M., Miyazaki S., Ito K., and Hirahara K., An adjoint data assimilation method for optimizing frictional parameters on the afterslip area, Earth Planets Space, 65, 1575-1580, 2013.
Nagao, H., What is required for data assimilation that is applicable to big data in the solid Earth science?, The Proceedings of 17th International Conference on Information Fusion, 2014 (in press).
Rice, J. R., Spatio-temporal Complexity of Slip on a Fault, J. Geophys. Res., 98, 9885-9907, 1993.