統計学輪講(第17回) 日時 2014年11月04日(火) 14時50分~15時40分 場所 経済学部新棟3階第3教室 講演者 水迫 覚信 (工M2) 演題 スパースモデリングによる首都圏における地震動分布推定手法の開発 概要 構造物の即時被害予測は、大地震により損傷を受けた構造物を数値シミュレーションにより即座に同定し、復旧を効率化する仕組みである。 シミュレーションの入力となる構造物における地震動は観測データに基づき推定され、高精度な被害予測には観測データよりも圧倒的に 高空間分解能を持つ地震動分布を推定する必要がある。発表者らは首都圏地震観測網(MeSO-net)で得られる観測データから、 高空間分解能を持つ地震動分布を推定する手法を開発している。 水迫[2013、卒業論文]は、テイラー展開に基づく手法を提案し、東北地方太平洋沖地震発生時にMeSO-netで観測されたデータに手法を 適用した結果、0.15 Hz 以上の地震動分布を得ることが難しいことを示した。一般的な構造物の固有周波数は1-10 Hz であるため、 手法の実用化のためには0.15 Hz 以上の周波数成分を含む地震動分布推定が求められる。テイラー展開に基づく手法を用いる際、 テイラー展開の打ち切り次数、及びモデルを適用する観測点(以降、クラスタと称する)をチューニングする必要があるが、 水迫[2013] は恣意的に一次でテイラー展開を打ち切り、ターゲットとする構造物の近傍5 観測点をクラスタとした。 本研究では、lasso(least absolute shrinkage and selection operator)を応用し、打ち切り次数とクラスタを客観的にチューニングする 手法の開発に取り組んでいる。lasso は係数のL1 ノルムを正則化項としており、有効な係数を自動的に選択する。本研究で提案する手法では、 所与のクラスタに対する打ち切り次数をlasso によって自動判定し、情報量規準に基づき適切なクラスタを選択する。初期的な結果として、 0~1 Hz において、本手法によって既往研究よりも高い精度で地震動分布が推定されるという結果が得られている。