統計学輪講(第20回)

統計学輪講(第20回)
日時      2014年11月25日(火)    14時50分~15時40分
場所      経済学部新棟3階第3教室
講演者    大澤 巧 (経済M2)
演題      階層ベイズモデルを用いた出生率の推計

概要
本発表では、Alkema et. al.(2011)で提案されたモデルの再現結果を中心に発表する.

現在、国連はWorld Population Prospects(WPP)の中で、全ての国に対して人口の予測を行っている。この予測は、様々な国際機関や研究者によって利用されており、事実上のスタンダードになっている.
予測はコーホート要因法によって行われているが、この予測を行うためには出生率の推移と平均余命に対する仮定が必要である.
国連はWPP2008までは、出生率と平均余命の推移を、二重ロジスティック曲線を用いた決定論的なモデルで予測しており、将来の不確実性については考慮していない.
Alkema et. al.(2011)では出生率に対して、Raftery et. al.(2013)では平均余命に対して、国連の用いた二重ロジスティックモデルに誤差項を導入し、不確実性を考慮したモデルに対して推定を行っている.
これらのモデルは、Raftery et. al. (2014)にまとめられている.
各国のデータのサイズが小さいという問題を克服するため、推定は階層ベイズモデルを用いている.
出生率に対する結果は、WPP2010の決定論的な予測の基礎になっており、また、国連はWPP2014で、これらの方法を用いて確率論的に予測を行うことを予定している.

本発表では、まず、二重ロジスティック関数とAlkema et. al.(2011)で用いられた階層ベイズモデルを説明する.
その後、Alkema et. al.(2011)で提案されたモデルを用い、東アジアの国々に対する出生率の推計を行う.
最後に、今後モデルをどのように改善していくかの方針を示す.

(参考文献)
Raftery A. E., L. Alkema, P. Gerland(2014). Bayesian Population Projections for the United Nations. Statistical Science 29, 58-68
Raftery A. E., J. L. Chunn, P. Gerland, H. Ševčíková(2013). Bayesian Probabilistic Projections of Life Expectancy for All Countries.  Demography 50, 777-801
Alkema L., A. Raftery, P. Gerland, S. Clark, F. Pelletier, T. Buettner, G. Heilig(2011). Probabilistic Projections of the Total Fertility Rate for All Countries, Demography 48, 815-839