統計学輪講(第14回)

統計学輪講(第14回)
日時      2015年07月21日(火)    14時55分~15時45分
場所      経済学部新棟3階第3教室
講演者    川原 拓也 (医D1)
演題      情報のある打ち切りをともなう生存時間データからの生存関数の二重ロバスト推定

概要
 長期にわたる臨床試験では試験途中の打ち切りが不可避である。打ち切りデータからの生存関数推定のために
Kaplan-Meier推定量がよく用いられるが、ベースライン時に得られている共変量で条件づけた層内においても
打ち切りと予後が独立でない状況(情報のある打ち切り)下では、Kaplan-Meier推定量は一致性をもたない。
研究途中で測定された時間依存性共変量を解析に組み込むIPCW推定量も近年は広く利用されている。しかしながら、
IPCW推定量の推定効率は、打ち切り割合の上昇と共に低下することが指摘されている上に、解析時に想定した
打ち切り確率に対するモデルが誤特定されている可能性がある。
 本研究では、打ち切り確率に対するモデルか、イベント発症確率と時間依存性共変量に対するモデルセットの
いずれかが正しく特定されていれば生存関数を一致推定可能な、二重ロバスト推定量[1]を提案する。
 シミュレーション実験により提案法の二重ロバスト性と、IPCW推定量に対する効率改善が確認された。
最後に、提案法を大規模臨床試験データに適用した結果を示す。

1. Kang JD, Schafer JL. Demystifying double robustness: a comparison of alternative strategies for 
estimating a population mean from incomplete data (with discussion). Statistical Science 2007; 
22:523-580. DOI: 10.1214/07-STS227.