統計学輪講(第22回) 日時 2016年12月13日(火) 15時45分~16時35分 場所 経済学部新棟3階第3教室 講演者 萩原 康博 (医D1) 演題 進行がんの検証的臨床試験における動的治療レジメンを用いた統計的因果推論 概要 進行がんの治療には、強い副作用が発現したり、がんが大きくなったりすると、 行っていた治療を中止し別の治療へ切り替える、という特徴がある。 進行がんに対する治療の有効性を最終的に判断する検証的臨床試験においても、 ランダム化された割付治療中に強い副作用やがんの増大が認められた場合には、 倫理的理由や医学的理由により、後治療と呼ばれる割付治療とは異なる治療を 医師の裁量で開始することが許容されることが一般的である。 進行がんの検証的臨床試験における有効性に対する標準的統計解析は、 intention-to-treatの原則にのっとり行われる(intention-to-treat解析)。 intention-to-treat解析では、後治療を考慮せずに割付治療群間のアウトカム (たとえば生存時間)を比較する。後治療が実施された場合のintention-to-treat解析には、 医師がどのような後治療を選択するかによって結果がかわりうるという問題がある。 本発表では、後治療に関する治療ルールを定め、その後治療ルールのもとでの 群間比較を考えることで、intention-to-treat解析の問題を解決することを試みる。 具体的には、後治療ルールを動的治療レジメンと呼ばれる手法を用いて定式化し、 動的治療レジメンに対する統計的因果推論の問題に帰着させる。 動的治療レジメンに対する統計的因果推論手法のひとつであるinverse probability weighting法を応用した解析手法を提案し、数値実験により提案法の性能を評価した 結果を報告する。また、提案法を実際に行われた進行がんの検証的臨床試験データに 適用した結果も紹介する。