統計学輪講(第11回)
日時 | 2018年7月3日(火) 14時55分 ~ 16時35分 |
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場所 | 経済学研究科棟 3階 第3教室 |
講演者 | 入江 薫 (経済学研究科) |
演題 | 計数時系列データの状態空間モデリングと逐次解析 |
概要 |
非負の整数値(計数)を取る時系列データの分析においてはポアソン−対数正規分布(または対数ガンマ分布)型の状態空間モデルを用い、マルコフ連鎖モンテカルロ / MCMC 法によって推定を行うのが一般的である。 一方で、データが高頻度で観測され、それに伴って逐次的なモニタリング・予測・意思決定を必要とする場合には計算時間が問題となり、 MCMC 法では限られた時間内に分析を完了することができない。 この問題に対して、 Smith (1979) および Smith and Miller (1986) で提案されたポアソン−ガンマ型の状態空間モデル / PGSSM が近年注目されている。 このモデルは状態の遷移をスケール調整ベータ分布によって表現し、ポアソン−ガンマ分布の自然共役性により事後分布や予測分布が解析的に求まることから、分析に必要な計算を解析的にまたは簡易なモンテカルロ法により短時間で終えることができる。 本発表では、ポアソン−ガンマ型の状態空間モデルによる高頻度計数時系列データの分析に関する研究を、主にふたつの具体的なデータを取り上げて紹介する。 第一のデータは毎30秒毎に更新される FoxNews のウェブサイトへのアクセス数のデータであり、動的な二元配置分散分析に対応する Dynamic Gravity Model の推定を、 PGSSM を通じて行う。 第二のデータは毎10分毎に更新される配車サービス UBER の需要データであり、突然の需要量の増加に対する予測分布の適応が遅い問題を取り上げ、 PGSSM の拡張と、その計算のための逐次モンテカルロ法について説明する。 |