統計学輪講 第5回

日時 2019年5月14日(火)
14時55分 ~ 16時35分
場所 経済学研究科棟 3階 第3教室
講演者 明石 郁哉 (経済学研究科)
演題 非正則時系列モデルに対する頑健な統計手法の構成
概要

本報告では様々な非正則性を持つ時系列モデルに対して頑健な統計手法の構成法を紹介する。 近年、金融・経済データ、生体データ、水文学データなど様々な分野で無限分散性・長期記憶性を持つかのようなふるまいを示すデータが多数観測される。 そのようなデータを適切にモデリングするために無限分散性や長期記憶性を持つ時系列モデルを用いた場合、古典的な最尤法や一般化モーメント法などを直接用いることは困難であり、また統計量の収束オーダーや漸近分布が未知の局外母数(誤差分布の裾指数や Hurst 指数)に依存する煩雑なものとなる。結果として、検定の棄却域や信頼区間を解析的に計算することが不可能となる。

この問題に対して本報告では、中央値回帰・自己加重法に基づく一般化経験尤度 (GEL) 統計量を用いた手法や、自己基準化法を用いた煩雑な漸近分布の直接推定法などを報告する。 結果として、収束オーダーや漸近分布の事前推定が不要な頑健な統計手法を構成し、数値実験などを用いて提案手法の有用性を示す。

報告後半では、球面・シリンダー上のデータに対する頑健なデータ解析手法について紹介する。 地震や風向データ・ある種の生物の生息範囲、森林火災の拡大方向データに代表される方向データ解析では、通常の標本平均などの基礎統計量をそのまま用いることはできず、方向統計学独自の統計手法が必要となる。 この問題に対しても報告者がこれまで研究してきた GEL 法、中央値回帰の手法を用いた新しい方向データの解析手法を紹介する。