統計学輪講 第8回

日時 2019年6月11日(火)
14時55分 ~ 15時45分
場所 経済学研究科棟 3階 第3教室
講演者 今井 凌 (経済学研究科D2)
演題 観測できない異質性を考慮したせり上げオークションモデルの識別に関する最近の文献の紹介
概要

オークションモデルにおいて、入札者達は把握しているが分析者は観測できないオークション毎の異質性 (unobserved heterogeneity, UH) を考慮に入れない場合、間違った政策的含意につながりかねず、これをモデルに組み込むことは重要である。 一方で UH の存在はモデルの識別を難しくさせ、特にせり上げ入札では入札の一部分 (順序統計量の上から2番目等) しか観測できない場合がありこの問題は顕著になる。 本発表では、連続的な UH が入札者の評価額に加法的に入る場合のせり上げ入札モデルに関する最近の文献について、その識別の概略を紹介する。

Freyberger and Larsen (2017) は、入札者数が観測できない場合に、2つの入札の順序統計量と最低入札価格からの識別を、 Hernández, Quint and Turansick (2019) は、UH と個人の異質性の密度関数が区分的に解析的であるという仮定の下、入札者数 (の一部) と取引価格からの識別を、Luo and Xiao (2019) は、Luo (2018) で導入された restricted stochastic dominance ordering の仮定の下で、入札の任意の2つ連なった順序統計量のみからの識別を、それぞれ議論している。