統計学輪講 第16回
日時 | 2019年10月8日(火) 14時55分 ~ 16時35分 |
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場所 | 経済学研究科棟 3階 第3教室 |
講演者 | 久保川 達也 (経済学研究科) |
演題 | スコア調整法による形状母数の推定とその周辺 |
概要 |
スコア関数に工夫を加えることにより有用な推定を与えることができる場合がある。ここでは,以下の古典的な問題について紹介する。 (1) ガンマ分布とベータ分布の形状母数の最尤推定は,digamma 関数を含む尤度方程式を数値的に解く必要がある。 モーメント推定は closed-form を与えるが推定誤差が大きくなってしまう。 そこで,スコア関数に工夫を加えることにより,closed-form でしかもモーメント推定より推定誤差が小さいものを与える。 (2) 疾病地図の作成などで利用されるポアソン・ガンマモデルや2項・ベータモデルにおいて形状母数の最尤推定を求めるには,EMアルゴリズムを用いると便利であるが,更新の各過程において digamma 関数を含む尤度方程式を数値的に解く必要がある。 これに対してスコア調整法を用いることにより更新アルゴリズムを closed-form で記述することができ,最尤法とほぼ同等な推定精度を与えるものが得られる。 (3) 小地域推定で用いられる混合効果モデルにおいて,平均と分散の両方に変量をいれることにより地域毎に平均と分散が異なるモデルが得られ,平均と分散の両方を縮小する経験ベイズ推定が与えられる。 この際,分散の分布の形状母数を推定するためのEMアルゴリズムにおいて,スコア調整法により更新アルゴリズムを closed-form で与えることができる。 (4) 線形混合モデルの分散成分の推定において,スコア関数を変形することにより,REML推定,Fay-Herriot 推定,Prasad-Rao 推定という代表的な推定量を含む統一的な推定方程式を導くことができ,その漸近分散と2次漸近バイアスを与える。 |