統計学輪講 第3回

日時 2020年4月21日(火)
14時55分 ~ 16時35分
場所 Zoomオンライン開催(URLはシラバスまたは参加者メーリスをご確認ください)
講演者 岸野 洋久 (農)
演題 表現型進化と分子進化の橋渡し
概要

進化の歴史の推定においては、最小進化の規準が標準的に用いられる。統計モデルを通した推定も、この規準に拠る推論を補正したものとみなすことができる。分子進化においては適応的な変異の占める割合は無視できるほどに小さいため、この規準は妥当する。ところが表現型の進化においては、似たような環境にさらされると収斂進化することがしばしばある。こうした場合、最小進化の規準に基づく推論は偏った結論を導いてしまう。分子進化の中立説によると、分子進化速度は突然変異率と中立な変異の割合の積で、後者は遺伝子にかかる機能的な制約を反映している。これを多遺伝子座に拡張することにより、多遺伝子系統樹から中立な変異の割合の揺れを推定することが可能となる。そしてこれを説明変数として取り入れることにより、最小進化の規準に拠らない進化史推定の道が開かれる。また、分子進化速度は種内の遺伝的多様度をも決める。予測値から大きく逸脱した遺伝子の性質を調べることにより、種特異的に付加的な淘汰圧を受けている形質や機能を推し量ることができる。