統計学輪講 第8回

既存試験から得られた対照治療に関するデータ（以下、ヒストリカルコントロールデータ）の利用は、当該試験で必要な対照治療に関する情報を一部補完し、試験の実施可能性を高める一つの方法である。当該試験とヒストリカルコントロールデータの類似度に応じてある治療に割付する確率を試験途中で変更できる効率的なベイズ流適応的ランダム化デザインが提案されているが、患者背景の違いを考慮したデザインは提案されていない。本研究では、傾向スコアマッチングによるヒストリカルコントロールデータを利用したベイズ流適応的ランダム化デザインを提案し、その統計学的性能をシミュレーション実験で評価する。シミュレーション実験の結果、提案法は患者背景を適切に調整できる状況ではバイアス、αエラー、検出力に関して既存手法を上回る統計学的性能が確認でき、効率良くヒストリカルコントロールデータを利用できることが示唆された。本発表では、本研究の提案法、結果、および考察について報告する。