統計学輪講 第13回

日時 2021年7月13日(火)
14時55分 ~ 15時45分
場所 Zoomオンライン開催(URLはITC-LMSをご確認ください)
講演者 小田 秀匡 (情報理工D3)
演題 Bayesian predictive distributions for Wishart distributions based on relatively invariant prior distributions
概要

線型 Lie 群の右 Haar 測度が誘導する事前分布に基づく Wishart 分布の Bayes 予測分布の Kullback-Leibler 損失の評価に関して発表する。
文献 [1] と先週開催された International Society for Bayesian Analysis (ISBA) World Meeting 2021 における小田の発表に基づく発表である。

r 次元 Wishart 分布の Bayes 予測分布の minimaxity と admissibility は、r = 1 の場合 (Gamma 分布) と r > 1 の場合 (Wishart 分布) とで様相が異なる。
Jeffreys 事前分布に基づく Gamma 分布の Bayes 予測分布は minimax である。
この Bayes 予測分布の admissiblity は明らかにされていないが、現時点での研究の結果について紹介する。
一方、r > 1 の場合は、Jeffreys 事前分布に基づく Wishart 分布の Bayes 予測分布は minimax でも admissible でもない。
この機構を、一般線型群の部分群の作用に関する不変性を用いて説明する。

Wishart 分布に対する考察は、より一般の統計多様体に拡張できる可能性がある。
まず、一般に統計多様体が与えられると、統計多様体上に Fisher 情報量に基づく計量が定義される。
次に、Fisher 情報量が定義されると、統計多様体上の関数空間の微分作用素として、Laplace-Beltrami 作用素が定義される。
Laplace-Beltrami 作用素は統計多様体の大域的な情報を反映するが、特に Laplace-Beltrami 作用素の spectrum (固有値の分布) が統計的に重要な性質を要約していると考えられる。
数学的に厳密な証明は完成していないが、現時点での研究の結果について紹介した い。

参考文献:
[1] Hidemasa Oda and Fumiyasu Komaki. "Enriched standard conjugate priors and the right invariant prior for Wishart distributions." arXiv preprint arXiv:2101.04919 (2021).