統計学輪講 第2回
日時 | 2022年04月19日(火) 14時55分 ~ 16時35分 |
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場所 | ハイブリッド開催 |
講演者 | 伊藤 伸一 (地震研) |
演題 | 収縮亀裂パターンの動的統計則に現れる相転移的性質 |
概要 |
本研究では、収縮によって発生する表面亀裂パターンの動的な統計則を調べた。そのような亀裂パターンは冷却された溶岩表面や干上がっていく泥の表面などで観察され、収縮に伴ってゆっくりと発展していくため、破片のサイズ分布のようなパターンの統計的性質は時間依存性を持つ。このような統計的性質の時間依存性を観察・理解することは、その物質が経験した環境履歴を現在のパターンから推定・抽出するために重要な課題である。本研究では、薄層の高密度コロイド懸濁ペースト表面に発生する乾燥亀裂パターンを対象とし、その破片サイズ分布の時間依存性を実験的および理論的に調べた。実験の結果として我々は、破片サイズ分布の時系列は破片サイズをその平均値でスケーリングすることにより、時間に依存しない不変分布に収束すること(動的スケーリング則)を発見した。このスケーリング則の起源を理解するために我々は、収縮亀裂によって破片が細分化されていく過程を表現する統計モデルを構築し、このモデルにより動的スケーリング則を理論的に再現することに成功した。さらに、モデルの詳細な解析よって、収縮破壊が進行していく間に破片サイズ分布の関数形のクラスが遷移することを予測した。この関数形遷移の存在を実験的にも確認するため、破片サイズの時系列データにベイズモデル選択による解析を適用したところ、確かに実際の実験の破片サイズ分布にも関数形の遷移が存在を確認することができた。 |