統計学輪講 第05回

日時 2023年05月09日(火)
15時45分 ~ 16時35分
場所 経済学部新棟3階第3教室
講演者 中川 皓太 (情報理工M2)
演題 非一様多層確率的ブロックモデルにおけるコミュニティ推定のminimaxレート
概要

SNSや脳の神経など,現実のネットワークにおいては,しばしばコミュニティ構造が観測される.確率的ブロックモデル(SBM)は,こういったグラフ上のコミュニティを表現するのに有用であるとして,古くから盛んに研究されているネットワークモデルである.
近年,このSBMの拡張である多層確率的ブロックモデル(MLSBM)というモデルを用いた,同一ノード集合に対して複数種類のネットワークが得られているような状況でのコミュニティ構造の分析に注目が集まっている.これは,例えば複数SMS間にわたるユーザー同士の繋がりのトラッキングや,時間変化する脳の神経ネットワークの分析などに応用が可能であり,実用上効果的なアルゴリズムもいくつか知られているが,その最適性まで踏み込んだ研究は少ない.

本発表では,MLSBMの中でも,特にコミュニティ構造が層間で共通していない非一様なケース(IMLSBM)における,コミュニティ推定の漸近的minimaxレートについての我々の研究成果を紹介する.
まず,IMLSBMにおける推定の漸近的minimaxレートについて,その理論的な下界を与えたことを説明する.
次に,得られたレートの下界を達成すると予想される,最適かつ効率的な推定アルゴリズムの構成について述べる.このアルゴリズムの最適性の証明は現在取り組み中であり,まだ完全には明らかにできてきないが,得られている部分的な結果と,既存研究を踏まえると,minimax最適であると期待されることを説明する.
最後に,得られたレートに関する考察について述べる.コミュニティ数が3以上のIMLSBMに適用できるminimaxレートの結果を得たのは本研究が初であり,特に,ゆらぎの大きさに依存する信号強度とコミュニティ数の関係性について,興味深い解釈が与えられることを説明する.