統計学輪講 第14回

日時 2023年07月18日(火)
14時55分 ~ 16時35分
場所 経済学部新棟3階第3教室
講演者 萩原 康博 (医)
演題 二値アウトカムのランダム化比較試験における共変量調整:モデル誤特定に頑健な回帰係数アプローチ
概要

ランダム化比較試験では比較する2群がランダム化によって形成されるため、共変量を調整しなくても治療効果に対して妥当な推測を行うことができる。しかし、ランダム化比較試験でも共変量を調整することで、治療効果に対する推測の統計的効率を高めることができる。このことは、必要症例数と試験期間の減少、引いては治療開発の効率化につながる。
ランダム化比較試験で用いられる共変量調整法に、回帰係数アプローチがある。回帰係数アプローチでは、回帰モデルに含まれる治療変数の回帰係数の推定値を治療効果と解釈する。連続アウトカムの場合は、共分散分析を用いた回帰係数アプローチが回帰モデルの誤特定に頑健な共変量調整法として確立している。一方、二値アウトカムの場合は、ロジスティック回帰を用いた回帰係数アプローチは回帰モデルの誤特定に頑健でない。そのため、モデル誤特定に頑健なロジスティック回帰標準化が規制当局のガイダンスで示唆されている。
本発表では、二値アウトカムのランダム化比較試験でも、共分散分析のように回帰モデルの誤特定に頑健な回帰係数アプローチが可能であることを紹介し、その統計的効率を評価した結果を報告する。