統計学輪講 第24回

日時 2023年12月26日(火)
14時55分 ~ 16時35分
場所 経済学部新棟3階第3教室 及び Zoom
講演者 栗栖 大輔 (空間情報科学研究センター)
演題 Nonparametric regression for spatial data and some applications
概要

本発表では以下の3つの研究について紹介する.
1.多変量RDD
2.空間トレンド回帰モデルのカーネル推定
3.空間(トレンド)回帰モデルのシリーズ推定

研究1ではコロンビア政府が行った奨学金プログラムを取り上げ,Regression discontinuity desing (RDD)を用いてその効果を分析した結果を紹介する.このプログラムで奨学金を受け取るには貧困レベルと試験の成績の2つの基準(ランニング変数)で閾値を超える必要があり,多変量のランニング変数を用いたRDD (多変量RDD)を実行することになる.本研究では多変量RDDを実行するために多変量局所多項式回帰を用いた方法を新たに提案し,これにより既存研究よりもより柔軟な分析が可能になり,理論的な問題点も解消できることについて議論する.

研究2では局所多項式回帰を用いた空間データのノンパラメトリック回帰について紹介する.特に,d次元ユークリッド空間上の超矩形として定義される観測領域上で定義された関数(空間トレンド関数)をその領域内の不等間隔な地点で空間相関を持つ誤差を伴って観測する状況で空間トレンドをノンパラメトリックに推定する問題を考える.本発表では局所多項式推定量の漸近正規性,漸近分散の推定量の一致性,一様収束レートについて紹介する.また空間相関をもつ誤差項の例としてレヴィ駆動型移動平均確率場を紹介し,数値実験の結果や応用例についても議論する.

研究3ではシリーズ回帰を用いた空間データのノンパラメトリック回帰について紹介する.データ観測は研究2と同様の設定を考え,空間トレンドをノンパラメトリックに推定する問題を考える.本発表では 一般のシリーズ推定量の一様収束レート,L^2収束レート,漸近正規性について紹介する.またトレンド関数がヘルダークラスに属する場合にスプライン/ウェーブレット推定量が最適な一様収束レートを達成することを紹介する.時間があれば回帰モデルが空間相関をもつ共変量を含む場合への拡張と応用例についても議論する.

以上の研究は東北大学の石原卓弥氏,松田安昌氏,一橋大学の澤田真行氏との共同研究に基づく.

参考文献
[1] Ishihara, T. Kurisu, D., Matsuda, Y., and Sawada, M. (2023) Local-polynomial estimation for multivariate regression discontinuity designs.
[2] Kurisu, D. and Matsuda, Y. (2023+) Local polynomial trend regression for spatial data on Rd. Bernoulli. in press.