統計学輪講 第04回
日時 | 2024年04月30日(火) 14時55分 ~ 16時35分 |
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場所 | 経済学部新棟3階第3教室 |
講演者 | 野村 尚吾 (医学系研究科) |
演題 | ログランク検定・Cox回帰を前提とした臨床試験デザインの代替案 |
概要 |
近年、がん領域では免疫チェックポイント阻害剤(immune-checkpoint inhibitors; ICI)と呼ばれる、ヒトの免疫機構を標的とした薬剤が非常に高い有効性を示している。がん臨床試験の主たる関心はKaplan-Meier曲線に差があるかどうかを仮説検定により評価することにあるが、ICIに代表されるがん免疫療法の臨床試験では、Kaplan-Meier曲線の乖離が一定期間後に認められる、効果遅発と呼ばれる現象が確認され得る。大多数のICIの臨床試験が慣例的に比例ハザード性に頼ったログランク検定・ハザード比に基づく検定を主解析とする中、医学・統計のコミュニティでは、効果遅発下の検出力低下や効果指標の解釈上の問題が数多く指摘されるに至っている。 本発表ではまず、検定手法に関する近年の提案について概説する。その後、発表者の近年の研究成果を2つ紹介したい。1つ目は、過去の臨床試験データからKaplan-Meier曲線の乖離タイプをベイズ流に推測する試験デザイン、2つ目は、臨床試験の中途データを使ってKaplan-Meier曲線の乖離を予想し、その結果に応じてそれ以降の計画・解析手法を見直す適応的試験デザインである。 |