統計学輪講 第05回

日時 2024年05月14日(火)
15時45分 ~ 16時35分
場所 経済学部新棟3階第3教室 および Zoom
講演者 加藤真大 (総合文化研究科D3)
演題 分布マッチングに基づく漸近的に不偏な合成コントロール法
概要

合成コントロール法(Synthetic Control Method; SCM)は比較事例分析において重要な手法として知られている.SCMの基本的な考え方は,介入を受けたユニット(処置ユニット)の反実仮想的なアウトカムを,処置を受けていないユニット(非処置ユニット)のアウトカムの加重和を用いて推定することである.SCMによる処置効果の推定は,政策介入の処置効果を評価する上で重要であり,したがって,推定に用いる非処置ユニットの「重み」の推定は多くの研究の焦点となっている.本論文では,既存研究に基づいて,SCMの推定において,誤差項と非処置ユニットのアウトカムの相関という,内生性問題に暗黙的に悩まされていることを整理する.この内生性の結果,処置効果の推定量にはバイアスが生じている.この問題に対応するために,処置ユニットのアウトカムの密度が非処置ユニットの密度の加重和(すなわち混合モデル)で近似できると仮定する.この仮定に基づいて,処置ユニットのアウトカムのモーメントと非処置ユニットのアウトカムのモーメントの加重和が同じになるように重みを推定することで,処置効果を推定する方法を提案する.私たちの提案する方法は既存の方法に比べて二つの利点がある.第一に,混合モデルの仮定の下で,私たちの推定量は漸近的に不偏である.第二に,既存研究でも混合分布の仮定のもとで処置効果を推定する方法が提案されているが,そうした手法は最適輸送に基づいて提案されており,私たちの手法はモーメントをマッチングさせるだけなのでそれらと比べて簡単に実行できる.

本発表は以下の原稿に基づくものである.
https://arxiv.org/abs/2307.11127