統計学輪講 第07回

日時 2024年06月04日(火)
15時45分 ~ 16時35分
場所 経済学部新棟3階第3教室 および Zoom
講演者 楠井 俊朗 (情報理工M2)
演題 深層学習を用いた地震波形データからのスロー地震を特徴づける確率微分 方程式表現の獲得
概要

本発表では、シグネチャ(Signature)法[1]の説明及び、スロー地震を確率微分方程式(SDE)によってモデル化する自身の研究について発表する。

スロー地震は、プレート境界において通常の地震よりもはるかに遅い速度で発生する滑り現象で、プレート境界型地震と関連がある可能性が考えられており、様々な側面から研究が進められている。
スロー地震は、周波数帯や継続時間等の観点から様々に分類できるが、本研究では連続的に起こる振動であるtremorを対象とする。

スロー地震は長期的にはブラウン運動と似たような振る舞いをするため、SDEによるモデル化を通してスロー地震特有の構造を捉えるという解析手法が考えられる。先駆的な研究として、Ide[2]は、スロー地震特有の性質はSDEに従いプレートの固着域の大きさが変化し、それによって地震波が生じるというモデルによって多く説明がつくことを説明している。
一方で、近年時系列データから深層学習を用いてSDEの表現を獲得する手法が研究されている。Issa et al. [3]は時系列データの類似性をSignature Kernelを用いた尺度で測ることで、ニューラルネットワークとして定式化したSDEを時系列データより学習する手法を提案している。

本研究では、実際のtremorのデータのSDEとしての形式をIssa et al.の手法を元に学習し、得られたモデルに関して考察を行う。

[1]Lyons, T. J., Caruana, M., & Lévy, T. (2007). Differential equations driven by rough paths (pp. 81-93). Springer Berlin Heidelberg.
[2]Ide, S. (2008), A Brownian walk model for slow earthquakes, Geophys. Res. Lett., 35, L17301, doi:10.1029/2008GL034821.
[3]Issa, Z., Horvath, B., Lemercier, M., & Salvi, C. (2024). Non-adversarial training of Neural SDEs with signature kernel scores. Advances in Neural Information Processing Systems, 36.