統計学輪講 第21回

日時 2024年12月10日(火)
14時55分 ~ 16時35分
場所 経済学部新棟3階第3教室
講演者 福元健太郎 (法)
演題 固有振動接合関数、生存分析・事件・接合関数
概要

接合関数に関する私の研究から2つを紹介する。

よく知られている接合関数の多くは、単調な従属関係しか扱えないことが多い。しかし社会現象の中には非単調な従属関係も存在する。例えば民主党であれ共和党であれ、どちらかの党派ではなくいずれの党派でも、党派性の強い人ほどトランプに対する評価を尋ねる世論調査に回答しやすく、その結果、世論調査の結果が歪んでいるかもしれない。そこで三角関数を用いて非単調な依存関係を表す接合関数を取り上げ、固有振動接合関数と呼ぶことにし、その性質を特徴付ける[1]。次いで固有振動接合関数を、連立政権の成立と存続[2]及び米国における党派性とトランプに対する評価[3]に適用する。

ある事象が存続した後に何らかの事件が起きる場合、存続期間と事件の中身は、従属関係にあることがある。例えば、内戦が早く終わると政府が勝つことが多いが、内戦が長続きする場合は反乱軍が勝つことが多くなる[4]。あるいは議院内閣制において、議会を解散を遅くすると与党は得票率を増やしやすいが、早めに解散しても特に不利というわけではない[5]。従来の研究では時間変数と事件変数は独立したものとして扱われることが多かった。本研究では両者の従属関係を接合変数を用いてモデル化する。

[1] Fukumoto, Kentaro. 2023. "Not Linearly Correlated, But Dependent: A Family of Normal Mode Copulas." https://arxiv.org/abs/2308.03541 (under review) [2] Fukumoto, Kentaro. 2024. "Normal Mode Copulas for Nonmonotonic Dependence." Political Analysis 32(4): 417–30. [3] Fukumoto, Kentaro, and Michael A Bailey. 2024."A Copula Model for Nonignorable Nonresponse." mimeo [4] Fukumoto, Kentaro. 2015. "What Happens Depends on When It Happens: Copula-based Ordered Event History Analysis of Civil War Duration and Outcome." Journal of American Statistical Association 110(509): 83-92. [5] 福元健太郎. 2020. 「連続変数で表される事件の接合関数を用いた生存分析」『統計数理』68巻1号. 129-145頁