統計学輪講 第06回
日時 | 2025年05月20日(火) 14時55分 ~ 15時45分 |
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場所 | 経済学部新棟3階第3教室 および Zoom |
講演者 | 楠井 俊朗 (情報理工D1) |
演題 | Neural SDEを用いたスロー地震のデータ駆動型モデリング |
概要 |
本研究では、Neural SDE(Neural Stochastic Differential Equations)を用いた新たなスロー地震のモデリング手法を提案する。Neural SDEは、確率微分方程式(SDE)の係数部にニューラルネットワークを組み込んだ潜在変数による確率過程の近似モデルであり、連続時間における確率過程をデータ駆動で柔軟に表現可能である。その学習手法は多様だが、本研究では精度や安定性に優れるScoring Ruleに基づく手法[1,2]、特に非マルコフ時系列へ拡張可能なSignature法を用いたアプローチ[1]に焦点を当てる。 一方で、スロー地震は、プレート境界で通常の地震よりはるかに遅く発生する滑り現象である。大規模なプレート境界型地震との関連が示唆されており、そのメカニズム解明は重要な課題である。スロー地震の時系列データは長期的にブラウン運動に類似した振る舞いを示すため、SDEによるモデル化で特有の構造を捉える試みがなされてきた[3]。しかし、既存研究の多くはOrnstein-Uhlenbeck過程等比較的単純なSDEによる推定に留まっている。 本発表では、スロー地震現象を確率過程としてより詳細にモデリングすることを試みる。Signature Kernelを用いたNeural SDEをスロー地震の時系列データに適用し、従来のモデルでは捉えきれなかったスロー地震の詳細な動的特徴をデータ駆動で捉えることを目指す。
[1]Issa, Z., Horvath, B., Lemercier, M., & Salvi, C. (2023). Non-adversarial training of Neural SDEs with signature kernel scores. Advances in Neural Information Processing Systems, 36, 11102-11126. |