統計学輪講 第11回

日時 2025年07月08日(火)
14時55分 ~ 15時45分
場所 経済学部新棟3階第3教室 および Zoom
講演者 宇佐美 快 (情報理工M2)
演題 トーラス上の分布を用いたフィルタ手法による同期現象の解明
概要

ニューロンの同期現象は,アルファ波などの脳波として観測され,脳内で重要な役割を果たしていると考えられている.これらの現象は蔵元モデル [1]に代表される振動子集団としてモデル化することができる.本研究では, 蔵本モデルを用いた振動子の同期現象を状態空間モデルとして定式化し,時系列での解析を目指す.
位相データの状態推定においては,カルマンフィルタ[2]など従来のフィルタリング手法が広く用いられてきたが,これらは位相データの周期性をうまく捉えることができず,推定の不安定性を招くことがある.先行研究 [3,4]では,von Mises分布のような1次元の円周分布を用いたフィルタ手法が提案され、位相データの解析に利用されている.しかし,2次元のトーラス空間におけるフィルタ手法についての研究は限定的である.
本研究では,トーラス上の周期性および相関性の両方を捉える,2変量von Mises分布を用いたフィルタ手法を提案る.数値実験により,提案手法がKuramotoモデルに対する状態推定において有効であることが示唆された.
参考文献 :
[1]Kuramoto, Y. Self-entrainment of a population of coupled non-linear oscillators. In International Symposium on Mathematical Problems in Theoretical Physics. Springer. pp. 420–422 (1975).
[2]Kalman, R. E. A new approach to linear filtering and prediction problems. Transactions of the ASME Journal of Basic Engineering, 82, pp.35–45 (1960).
[3]M. Azmani, S. Reboul, J. -B. Choquel and M. Benjelloun, recursive fusion filter for angular data, IEEE International Conference on Robotics and Biomimetics (ROBIO), 2009, pp. 882-887 (2009).
[4]Kurz, G., Gilitschenski, I., and Hanebeck U.D., Recursive Bayesian filtering in circular state spaces, IEEE Aerospace and Electronic Systems Magazine, vol. 31, no. 3, pp. 70-87 (2016).