統計学輪講 第13回

日時 2025年07月15日(火)
14時55分 ~ 16時35分
場所 経済学部新棟3階第3教室
講演者 西 幹仁 (経済)
演題 時変係数線形モデルのカーネル回帰による推定
概要

線形モデルの枠組みにおいて、時変係数(time-varying parameter、以下TVP)をカーネル回帰によって推定することを考える。

先行研究においては、パラメータがランダムウォークに従うならばベイズ推定、構造変化がある場合にはサンプル分割後に各サブサンプル内で線形回帰、パラメータが(2階)連続微分可能ならばカーネル回帰を行う、というように、モデルごとに異なる推定法が用いられてきた。本報告では、上記のモデルを含む広範なTVPのクラスに対して、カーネル推定量の一致性と漸近正規性を示す。この広範なクラスは、TVPを時間tの関数とみなした場合の「滑らかさ」を表すパラメータによって特徴づけられ、その滑らかさに応じて適切にバンド幅を選ぶことで前述の漸近的性質が達成されることを示す。これにより、教科書的な「サンプルサイズの(-1/5)乗」に比例するバンド幅は、TVPが十分滑らかな場合にのみ適切であり、例えばTVPがランダムウォークに従う場合は「サンプルサイズの(-1/2)乗」に比例するバンド幅を選択する必要があることを明らかにする。また、一般には未知であるTVPの滑らかさに応じてバンド幅を選択するための方法とその理論的裏付けも併せて提案する。

本報告は以下の研究に基づく。
Nishi, M. (2025) Estimating Time-Varying Parameters of Various Smoothness in Linear Models via Kernel Regression, arXiv, arXiv:2406.14046.