統計学輪講 第25回

日時 2025年1月13日(火)
14時55分 ~ 16時35分
場所 経済学部新棟3階第3教室 および Zoom
講演者 宇佐美 慧 (教育)
演題 Matrix Decomposition-Based Approach for Structural Equation Modeling
概要

 構造方程式モデリング(structural equation modeling: SEM)は横断研究を中心に普及してきたが、縦断研究においてもLongitudinal SEM (LSEM)として、心理学や周辺領域における記述的・説明的研究を中心に近年特に広く展開されている。

 SEMの推定においては最尤法やそれに基づく修正統計量の利用が一般的であるが、例えばSTARTS (the Stable Trait, Auto Regressive Trait, and State)モデルと呼ばれる、縦断的な変化の中に見られる時間的に安定した(自己回帰)特性と状態(測定誤差)成分を直交分割して捉えることを目的としたSEMの下位モデルを最尤推定する際には、不適解が頻発することが知られている。

 本発表では、まずSTARTSモデルを因子分析モデル(factor analysis : FA)の観点から再表現し、そして近年FAの領域で注目を集めている行列分解(matrix decomposition FA: MDFA)を拡張したSEMの推定アプローチを紹介する。シミュレーション研究と実際のコホート研究に基づく分析を通して、提案手法は一定の計算コストを伴う反面、共分散構造に基づく最尤法や制約付最尤法・最小二乗法に比して不適解のリスクを低減でき、また(弱情報事前分布に基づく)ベイズ推定法と比べても、特にサンプルサイズや時点数が小さい場合において生じ得るバイアスを抑制できる可能性があることを説明する。

Usami,S. (2026). Matrix decomposition-based approach to estimate the STARTS model. arXiv: 2601.01163