統計学輪講 第2回

日時 2026年04月14日(火)
14時55分 ~ 16時35分
場所 経済学部新棟3階第3教室
講演者 松田 孟留 (情報理工)
演題 経験ベイズ法による二値行列補完
概要

Steinのパラドックスに始まる縮小推定の考え方はさまざまな統計手法の基礎になっている。行列正規分布の平均パラメータについて、Efron and Morris(1972)は特異値をゼロに縮小する経験ベイズ推定量を与え、そのミニマックス性を示した。この推定量はJames--Stein推定量の行列への一般化であり、未知の行列が低ランクに近い状況で高い推定精度を達成する。

行列データの観測成分をもとに未観測成分を予測する問題を行列補完という。二値の行列データに対する行列補完(1-bit matrix completion)は、推薦システムやネットワーク解析などに応用される。この問題に対して、多次元項目反応理論に現れるような低ランク構造に着目した手法が開発されてきた。

本発表では、縮小推定の行列への一般化に関するこれまでの結果を概説した後に、経験ベイズ法による二値行列補完に関する研究を紹介する。提案手法はEfron--Morris推定量から着想を得ており、モンテカルロEMアルゴリズムとベイズ予測分布を用いて未観測成分の予測を行う。シミュレーションと実データ解析において、提案手法は既存手法と同等以上の性能を示した。