統計学輪講 第5回
| 日時 | 2026年05月12日(火) 15時45分 ~ 16時35分 |
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| 場所 | 経済学部新棟3階第3教室 |
| 講演者 | 藤木 究 (情報理工M2) |
| 演題 | マルチンゲール事後分布の理論と計算 |
| 概要 |
観測データから統計的な不確実性を定量化することは、データ分析における極めて重要な課題である。この課題に対し、未観測のパラメータに事前分布を設定し、尤度を通じて事後分布を更新する標準的な「ベイズ推論」は広く用いられている代表的手法である。本発表では、パラメータに対する「事前分布」や「尤度モデル」といった恣意的な枠組みではなく、純粋な予測のばらつきから事後分布を定義し直す新しい推論の枠組みである「マルチンゲール事後分布(Fong et al., 2023)」を紹介する。 従来のベイズ推論は、現実に存在しない架空のパラメータを仮定するという哲学的な不自然さを抱えるだけでなく、複雑なモデルにおいてはMCMC(マルコフ連鎖モンテカルロ)法への依存による計算コストの爆発という実務的な限界に直面している。そこで本手法は、不確実性の源泉をパラメータではなく「まだ見ぬ未来の観測値」へと完全にシフトさせる。手元のデータから未来の観測値を無限にシミュレーションする「予測的リサンプリング」を行い、無限の未来から逆算される統計量のばらつきを事後分布として定義する。さらに本論文では、コピュラ(Copula)を用いた更新則を導入することで、これまで離散データに限定されていた予測的リサンプリングを、連続空間へと滑らかに拡張する手法を提案している。 Fong, E., Holmes, C., & Walker, S. G. (2023). Martingale posterior distributions. Journal of the Royal Statistical Society Series B: Statistical Methodology, 85(5), 1357-1391. |