統計学輪講 第7回

日時 2026年05月26日(火)
15時45分 ~ 16時35分
場所 経済学部新棟3階第3教室
講演者 金田 匠海 (医学D3)
演題 補助的時間依存性交絡因子を用いたrandomized g-推定の推定効率のロバ ストな改善法
概要

治療の因果効果を評価するためのゴールドスタンダードはランダム化比較試験(Randomized Controlled Trial; RCT)である。しかし実際のRCTではランダムに割り付けられた治療に対する不遵守やスイッチングなどが生じ、割り付け群に基づく因果効果の推定量が興味のある治療効果を反映しない場合がある。臨床試験における統計的原則を定めたガイドラインとその補遺であるICH E9 (R1) では、割り付け後に生じ結果の解釈に影響を与える事象を中間事象とよび、中間事象を考慮した治療効果であるestimandを設定することが重要視されている。本研究では仮想ストラテジーとよばれる、中間事象が起こらなかった仮想的な状況に観測される治療効果の推定を扱う。

仮想ストラテジーの推定方法の1つに、操作変数法の拡張であるrandomized g-推定がある。これはランダム化を操作変数として用いることで、時間依存性交絡因子に関する逐次交換可能性が成立しない場合でも一致性を有する。対して未観測の時間依存性交絡因子が存在しないと仮定すれば、局外パラメータの正しいモデル特定の下でセミパラメトリック有効推定量を構成することができるため、randomized g-推定は最適な推定効率を達成しない。

そこで本研究ではAdaptive Group Lassoを用いて不偏な推定方程式を選択し、未観測の時間依存性交絡因子やモデル誤特定が生じているかをデータ駆動的に判定し、存在しないと判定された場合のみその情報を利用することでrandomized g-推定の推定効率を(漸近バイアスに対して)ロバストに改善することを提案する。実際のRCTでは各観測時点で収集される変数が異なることも多いため、そのグループ構造を反映する。また局外パラメータの正しい特定のためにDouble/Debiased Machine Learningに基づき機械学習手法を用いる方法も提案する。シミュレーション実験により提案法の有限標本における性能の評価を行い、実際のRCTデータに提案法を適用する。