統計学輪講 第8回

日時 2026年06月09日(火)
14時55分 ~ 15時45分
場所 経済学部新棟3階第3教室
講演者 玉野 史結 (総合文化D1)
演題 局所識別可能な平均潜在アウトカム関数の解析接続と外挿リスクのミニマックス解析
概要

統計的因果推論は、構造的仮定の下で介入効果を識別する枠組みを与えるが、推定対象の介入は観測データが十分な重なり(オーバーラップ)をもつ領域の外側や境界付近に位置することが多い。このとき、因果効果が形式的に識別可能であっても、推定は極めて不安定になりうる。本研究の関心は、識別式の存在ではなく局所的に識別された介入族に対応する平均潜在アウトカム関数を外挿する際の統計的安定性と限界の定量化である。既存研究も外挿の危険性を指摘してきたが、識別可能性と安定推定可能性を分離し、外挿リスクを有効情報量に基づくミニマックスリスクで評価する枠組みは十分に整備されていない。

本発表では、この外挿問題をセミパラメトリックノイズ下の解析接続問題として定式化する。解析関数クラスの導入により外挿先の一意性が保証される一方、外挿に伴う推定ノイズの増幅は各介入点における有効影響関数から定まる共分散カーネルによって記述される。これを解析的近似バイアスと有効分散からなる最適回復問題として解き、関数の最近接特異点に由来する特異点幾何と、局所推定における有効情報スペクトルの減衰に由来する因果情報幾何の双方が、外挿リスクとミニマックス収束レートを決定づけることを示す。